太陽の日差しと言うより、呼吸する空気が熱を帯び、体の表面を隙間なく纏わりつく。
暑い。
車から降り、数歩、それだけでうだるような暑さが襲う。とっさに汗は流れず、少しの時間過ぎてから止まらなくなる。
猛暑の今夏。
金沢市 尾山神社。
前田利家とお松の方を祀る神社。
鳥居を通り見上げると、神門。他の神社では見ることのない洋風な佇まいに圧倒される。一目で心に焼き付く神門。
多くの方が参拝されていて、おみくじを引かれている方が多い。
この神社に祀られている、前田利家は、若かりし日は粗暴な行動が多かったらしいが、年を重ねるごとに人として成長した人物だと言われている。
最初から何でも出来る人より、人生の終焉まで成長を続けられる人の方が魅力を感じる。
そんなことを思いながら拝殿へ向かう。
日々、いろいろなことが目まぐるしく起こる中、疑問に思う日、後悔の念を抱く日、胸を痛める日、矜持を保つ日、三思後行の日、時には佚楽の日など、常に人は複雑な心の動きをしているのだなと思う。
見えない敵も、見える味方も、味方のような敵も、敵のような味方も、人を見抜く力があると、戦国時代を生き抜くことが出来るのかもしれない。現代もある意味戦国時代。けれど、騙されたとしても、またそれはそれだと思う。
それがまた楽しい。
平凡ではつまらない。
そう思う自分がいる。
境内に風が流れ、うだる暑さが一瞬途切れた。
「そうだ」
利家が笑っているのかもしれない。